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平成30年度長野県高等学校美術工芸教育研究会資料.pdf
上原一馬 UEHARA Kazuma Website

 
平成30年度 長野県高等学校美術工芸教育研究会 総会・研究会
 
大会テーマ 〈創造力を育む造形教育〉
期日:2018年11月16日(金)・17日(土)
会場:サントミューゼ 多目的ルーム 上田市天神3丁目15番15号
   ホテル圓山荘         千曲市上山田温泉2丁目9番地6
 
〔総会・研究会日程〕
11/16(金)
サントミューゼ 多目的ルーム 11/17(土)
サントミューゼ 多目的ルーム
9:10~ 9:30 受付
9:30~10:00 開会行事
10:00~10:50 総会A
11:00~11:50 高文連総会
11:50~12:10 支会A
12:10~13:10 昼食
13:10~13:45 研究会A①
13:55~14:30 研究会A②
14:40~16:00 講演(+質疑応答10分)
16:20~16:40 (諸連絡+)支会B
片付け・移動 9:00~ 9:15 受付    
9:15~ 9:25 全国研究大会参加報告
         美術館研修について
9:25~10:00 研究会B③
10:10~10:40 サントミューゼ特別研修
        (+質疑応答10分)
11:00~11:35 研究会B④
11:40~12:10 総会B
片付け
13:00~ 昼食会
アリオ2Fフードタウンなど
ホテル圓山荘
19:00~21:00 意見交換会
21:20~22:30 研究討議会
14:10~     美術館研修
サントミューゼ駐車場側正面入口集合
 
〔研究会 研究発表(授業実践を中心に)各支会1名〕
① 東信 江原一幸先生 ( 佐久平総合技術 高校 )
「KP法でなりきりんご〜伝える力の向上をめざして〜」 11/16
(金)
② 北信 山﨑萌子先生 ( 須坂創成    高校 )
「並製本を上製本へ −自分だけの1冊をつくる−」
③ 南信 林  遼先生 ( 松川・上伊那農業高校 )
「好奇心を刺激する授業づくり」 11/17
(土)
④ 中信 佐藤 隼先生 ( エクセラン   高校 )
「芸術は可能か?再考 −現代における「美術教育」「感性の生み出し方」の実践から−」
 
〔授業作品展〕東信高校の授業実践による作品展
 サントミューゼ 多目的ルーム(総会・研究会場)にて2日間を通して開催
 
〈11/16金〉講演会 
 講師 束芋氏(現代美術家)
 演題 『凡人のアイデア、自分だけの手法』
 
〈11/17土〉サントミューゼ特別研修
 講師 中村美子氏(上田市立美術館学芸員 学芸・展示担当係長)
 演題 『作家と町が輝く美術館企画
      〜小松美羽、越ちひろ、白井ゆみ枝、そして篠田桃江まで〜』
〈11/17土〉美術館研修
 ナビゲーター 東御清翔高校 津田翔一
    14:10 サントミューゼ駐車場側正面入口集合
        セゾン現代美術館「網膜と記憶のミトロジー」展
 
平成30年度 長野県高等学校美術工芸教育研究会研究大会 問題提起
美術教育をめぐる情勢 〜創造力の育成はいかにすべきか〜
事務局長 上原一馬
 
1. 失われた20年
1)
バブル崩壊からの景気低迷期10年、労働者派遣法の改正で非正規化が進んだ10年を合わせて「失われた20年」と呼びます。
 
この間、企業の採用自体が少なく、非正規に甘んじる若者が増加しました。非正規であることで、職場への愛着はなくなり、技術を積み上げようという意欲は低下していきました。
以前は、海外で「OJT」(=On the Job Training)と称される、職人気質の先輩社員が一人前になるまで新米を育てようとする徒弟制度のような企業内教育がなされていました。しかし、短期的な効率の追求はこの構図を壊していきました。
就職を希望しない若者も、起業への志があるわけでもなく、ただ何となく非正規で働いている状態となってしまいました。
その結果もたらされたものが、日本が誇りとしてきた技術力の著しい低下と、出口の見えない産業界の長期に渡る不振でした。
 
 ものづくり力の衰退は、産業において大きなマイナスになります。ものづくりの経験が乏しかったり、興味を持てない若者が増えてしまうことがないようにしなければなりません。高卒就職者に以前のような人材が少なくなったため、技術工に大卒代替が起こり、学歴をめぐるある種の混乱が生じています。
 今後は、いっそう造形教育の意義が問われることになるでしょう。
 
2. 複線型への教育課程改革
危機感を抱いた政府は、教育改革に乗り出しています。
教育課程改革では、単線型から複線型への改革が進んでいます。
今まで日本の教育は、すべての子に普通教育を施し、あらゆる可能性の中から、自分で将来の道を選択していく単線型(樹木型)でしたが、近年複線型化が進んでいます。
複線型(竹やぶ型)とは、2)図のアメリカ合衆国のように、教育課程の早い段階で、道筋が決まっていく教育課程のことです。
[1970年頃の教育課程比較表]2)

長野県内でも、屋代高校、諏訪清陵高校で中高一貫校が設置され、リーダー養成の中等教育学校とそれ以外の経理、技術者、労働者への教育とが分離され始め、異なる種別の学校ごとにふさわしい教育が求められ始めています。
 
さらに、専門職人口を増やすための国策として、2017年改正学校教育法の成立により、専門職大学の設立が推進されています。従来の大学との違いは、実習が占める割合を3割から4割と定め、これらの実習は企業などの現場で行われます。また、教員の4割以上を実務家が務めることとなっています。
美術デザインの分野では、国際工科専門職大学(東京都)、開志専門職大学(新潟県)の開学が予定されています。
 
3. ゆとり教育からの脱却
3)
教育内容に関しても改革が進められてきました。
ゆとり教育以前は、学習意欲の低下を、系統的な詰め込み教育に原因があると考えました。校内暴力を代表とする深刻な落ちこぼれの増加と学習離れがあったからです。
ゆとり教育下では経験からの知識獲得をねらいとした新教科「生活科」が小学校で設置されました。
中高の各教科でも、教育内容を削減した分、「経験的な学習」が重視されました。
「総合的な学習の時間」の設置は、机の上の学習だけでなく、教室の外での経験を学習の中に取り入れていこうという、学習意欲を高めるねらいがありました。
しかし、予算や人員配置のないまま、現場の裁量に委ねられたこの教科は、教員の多忙さを助長しただけで、「校外で体験実習をしたけれど、今一つ何の力が身についたか分からない」お荷物教科となってしまいました。
平成30年告示新学習指導要領では、「総合的な探求の時間」と名前を変え、主体的で探求的な学習を重視したり、一方でディベートなど対話的な活動を重視するなど、学習スタイルを転換しようという試みがなされています。
 
4. 学習意欲の低下と非行の変化 4)
学習意欲の低下は、非行現象の増加という形で表れます。社会背景や学校教育の歪みが影響し、増加する時(波)があります。5)
 
[非行の4つの波]
・第1の波(昭和26年頃)
 貧困型非行 戦後の食料物資不足
・第2の波(昭和39年頃)
 社会反抗型非行 高度成長の進学率の上昇と管理
・第3の波(昭和58年頃)
 学校反発型非行 詰め込み教育への反発
・第4の波(平成10年頃)
 逃避型非行 家庭や学校に居場所を失う
 
第1の波は、戦後の生活苦から他者のものを奪う略奪型でした。
第2の波は、高度経済成長期に上昇した進学率と管理に反抗する形で、学校や職場になじめなかった就職組の障害事件、既成の価値観に反抗する学生運動という形で表れました。
第3の波は、加熱する受験戦争の裏側で、落ちこぼれによる校内暴力や、刺激を求めて街を徘徊し遊び感覚で盗難や暴走を行う現象が起きました。
第4の波は、バブル崩壊後に就職に失敗した親を持つ、経済的に恵まれない貧困の子どもたちが、学校に馴染めず、不登校やゲーム、ネットの世界へと学校外に逃避していく逃避型に特徴があります。
 
その後、検挙非行件数自体は減少していますが、外在化しない逃避の割合は減ってはいないというのが専門家の見解です。
非行件数が減少傾向にあるとされる現在でも、社会への入口としての高校教育から、ドロップアウトさせない方策が求められています。
長野県内では、不登校の増加問題も含め、対策として総合学科や単位制・多部制などの校種の多様化と、学校選択の幅を広げる通学区の広域化を進めています。
 
5. スマホが主流の若者文化
6)
当の高校生の実情はどうかというと、もっぱらスマートフォンを使用したコミュニケーションの方法を取っています。8割近い若者がSNSを利用している現状があります。
7)
特にLINEやTwitterの使用率が高く、女性のSNS利用者の半数以上が1日に60分以上SNSを使用していると答えています。
8)
また、ゲーム依存により社会生活が困難になっている患者が、若年男性に増えていることを受け、世界保健機構WHOは2018年6月に「ゲーム障害」という依存症を認定しました。厚生労働省は、今年度中に実態調査をまとめることを発表しています。
9)
今は、スマホ文化への意識も必要な時期が来ていると言えるかもしれません。消費的ではない生産的な活用方法を模索していかなければならないでしょう。
最近では、デジタルツールを使用した教材での授業が数多く実践されるようになりました。従来の鉛筆や絵具を使った基礎的な造形力の習得の一方で、生徒のニーズにどのように対応していくかは、今後も課題となるでしょう。
10)
 
6. 今、世界的評価の高い日本の芸術は
表現のデジタルツールなどを駆使した多様化の中、世界的評価の高い日本の芸術の一つにアニメーションがあります。
スタジオジブリで作品を生み出した宮崎駿、ポスト宮崎駿と称される細田守、新海誠らの作品は世界的大ヒットとなりました。日本=アニメーションの国 というイメージが定着しつつあります。
もう一つ近年、世界的に高い評価を受けているのが、デジタルアートの分野で、代表的なのがteamLab(チームラボ)です。
11)
空間全体に映像を投影し、体験型で鑑賞者を楽しませる手法は人気が高く、今年2018年6月には、森ビル株式会社とチームラボが共同で運営する「森ビル デジタルアート ミュージアム」がお台場に誕生し、何か月も先までチケットが取れないほどの予約が殺到しています。
芸術表現はハードからソフトへの転換も盛んに行われています。
 
7. 創造力とは何か
「創造力」=「時代に即した新しいものを生み出す力」と定義したとしましょう。現在、創造力に関係する重要な人物と思われる2名を挙げておきたいと思います。
12)
一人目は、今年も国内で企画展が開かれているブルーノ・ムナーリです。デザイナー、芸術家、詩人、発明家。それぞれの分野で偉大な功績を残したムナーリは、創造力について次のように語っています。
「創造力とは、あろうかぎり完全な意味合いにおいて、人間の能力を活用する方法と結論づけられるだろう。」
「創造力のある個人とは、絶え間なく進化しつづけるのであり、その創造力の可能性は、あらゆる分野において、絶えず新しい知識を取り入れ、そして知識を広げ続けることから生まれる。」
 
さらにムナーリの優れた点は、理論ばかりでないということです。美術やデザイン作品の制作過程そのものを、自分の経験から段階的に分類し、それぞれの段階で必要な姿勢と手法について、細かな分析を加えている点です。13)
晩年は美術教育者として、次世代の子ども達の能力開発のために尽力しました。
「ある人が将来クリエイティヴな人間になるか、あるいは単なる記号の反復者になるかは教育者にかかっている。」
という言葉は、我々に向けられたメッセージと感じています。
14)
さらに現在では、創造性と脳の働きに関する研究も進んでいます。二人目は、東北芸術工科大学 創造性開発センターの有賀三夏氏です。芸術作品の制作が老人の認知症の改善に効果があることを実証し、さらに制作中の脳波を計測することで、脳の活性化が見られることを解析しました。
老人に限らず、すべての人が「芸術思考」によってもともと持っている「8つの知能」が活性化することを、データを元にして検証を進めています。
[多重知能理論による8つの知能とは]
1言語的知能     5空間的知能
2論理数学的知能   6対人的知能
3音楽的知能     7内省的知能
4身体運動的知能   8博物的知能
さらにそこでは、利己的で承認欲求・自己主張に偏った「芸術家思考」より、利他的で知識・記憶を総動員した「芸術思考」の方が、より脳力の活性化が見られるとしています。15)
 
8. 新学習指導要領の方向性
新学習指導要領では、「社会に開かれた教育課程」の実現を目指し、
① 何ができるようになるか
② 何を学ぶか
③ どのように学ぶか
を明確にすることが求められています。
学習内容においては、発想・構想段階のあいまいな概念であった「主題の生成」に、(1)絵画・彫刻では、「感じ取ったことや考えたことなどを基にした発想や構想」、(2)デザインでは、「目的や機能などを考えた発想や構想」が加わり、より具体的に評価の観点を明確にしています。
16)
そして、それらを基にした「創造的に表す技能」。この創造的な技能をいかに伸ばしていくかが、指導者の役割と言えるでしょう。
 
9. 美術科の地域再生の役割
長野県内では、少子化と高校の通学区広域化にともない、都市部の人気学校と地域高校の志願者の格差はより広がっています。
地域高校に入学したものの、卒業までいたらず、無職のまま地域のお荷物扱いとなる若者も少なくありません。
地元の企業が地元の高校に求人を出したり、地元の高校出身者が地元で起業することで、人材が地域に定着していた構図が崩れつつあります。
地域高校がなくなることで、若者が地域を離れ、いっそう過疎化が進んでしまうことが懸念されます。
今、地域高校の役割はいっそう問われ始めています。
「美術工芸」を特色とし、廃校寸前の高校が、全国から受験生が殺到する人気高校の生まれ変わった実例があります。北海道の「おといねっぷ美術工芸高等学校」です。17)
若者のいない村に若者を再び呼び集めたこの学校の取り組みには、多くのヒントがあると感じます。
 
10. 東信地区での研究会開催にあたって
会場となるサントミューゼは、その後の美術教育に大きな影響を与えた山本鼎にゆかりの深い場所でもあります。模写による訓練「臨画」からの脱却を訴え、自然観察による心の動きを重要視する自由画運動を先導しました。
もう一つ彼の推進した農民美術運動は、冬場に仕事のない農民に美術工芸を習わせ、その作品を販売することで、美術に馴染みのなかった人々にも収入と誇りを与えました。
鼎は「自分が直接感じたものが尊い そこから種々の仕事が生まれてくるものでなければならない」と語っています。
18)
また美術教育に対する思いを
すべての文化価値をなす学問は
小学生と専門家を貫く一線の上に貫かれている
子供らが自然に対するような
自由で率直な心が 私の常住になった時
はじめて本当の芸術を創り得るのだ19)
と綴っています。
鼎の思いが、日本全土を動かしていったように、この研究会が新しい時代を作っていくような実りあるものとなることを願います。
1) 青島 矢一編『教育の迷走 人材育成の「失われた10年」』(2008年)東信堂
2) 文部省大臣官房『我が国の教育水準』文部科学省HP( 2018年8月)
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/hpad197001/hpad197001_2_005.html
3) 日本人とフランス人『系統学習vs経験学習』( 2018年8月)
http://rlee1984.hatenablog.com/entry/2014/02/27/234905
4) 守山正『講演録 2非行と貧困 ─格差社会における社会的排除─』日立財団 Webマガジン( 2018年8月)
http://www.hitachi-zaidan.org/mirai02/symposium/moriyama-01.html
5) 池田桂子『情報誌 岐阜を考える 「少子化時代の子どもの現状・そして未来」』(1998年)岐阜県産業経済研究センター
6)7)8) TesTee lab.『LINEの交換が当たり前!?若年層のSNS利用に関する定点調査!』( 2018年8月)
    https://lab.testee.co/teen-sns2017
9)『信濃毎日新聞 第一社会面2018.9.1』(2018年)信濃毎日新聞社
10) 太田肇司書(2018年)
11)チームラボ『EPSON teamLab Borderless』
  ( 2018年9月)https://borderless.teamlab.art/jp/
12)ブルーノ・ムナーリ 萱野有美訳『ファンタジア』(2006年)みすず書房
13)ブルーノ・ムナーリ 萱野有美訳『モノからモノが生まれる』(2007年)みすず書房
14) 有賀三夏『自分の強みを見つけよう~「8つの知能」で未来を切り開く~』(2018年)ヤマハミュージックメディア
15) 有賀三夏『第55回全国高等学校美術工芸教育研究大会「人生に芸術をどう使おうか?」』ミニ講演会(2018年)埼玉県高等学校美術工芸教育研究会
16)横田学『学習指導要領 新旧対照表 高等学校芸術科美術「新しい学習指導要領を読む」』(2018年)日本文教出版
17)『ウェークアップ!ぷらす』(2009年11月21日)日本テレビ
18) 中川一政書『友人 山本鼎の言葉』(1978年)
19)『山本鼎のすべて展』映像(2014年)上田市立美術館
 
平成30年度 長野県高等学校美術工芸教育研究会研究大会 授業作品展文書発表
キ ャ ラ ク タ ー デ ザ イ ン
丸子修学館高等学校 上原一馬
 
1. 新たに生まれたキャラクター産業
近年のご当地PRキャラクターブーム。2000年代後半に入ってから、くまモンやふなっしーを代表するPRキャラクターは地域の特産品の広告塔として使用され、莫大な利益をもたらした。
他にもドラゴンクエストやポケモンなどのゲームキャラクターや、ペネロペやトトロなど物語のストーリーテラーキャラクター。ハローキティやリラックマなど、用途を持たない純粋キャラクターもいる。
いずれにせよ、キャラクター産業は、分野を広げ拡大し続けている。
美術の授業の題材としては、まだ歴史が浅い。
この授業実践は、社会との橋渡しとして位置する高校教育において、社会のニーズを意識した「キャラクターデザイン」の教材化の例である。
2. キャラクターの発想の仕方
(1)キャラクターの種類の中から一つ選ぶ
まずは、上記のようにキャラクターには種類があることを、具体的なキャラクターを紹介しながら分類し紹介していきます。この中から、ゲームが好きな生徒はゲームキャラクター、かわいい小物が好きな生徒はゆるキャラなど、選ばせます。
(2)キャラクター名とコンセプト
次に、「キャラクター名」と「コンセプト(キャラクターを一言で言うと)」を同時に決めます。すでに、この時点でイメージが湧いてくる生徒もいますが、思いつかない場合、『好きなキャラクターを5つ!』というように調べさせます。
発想が難しい生徒には、「人間か動物か」
「等身か二頭身か」「表情が好きなキャラ」「体の描き方で参考になるキャラ」など、『今日はこれを調べてみて』とお題を出して調べさせます。
(3)キャラクター設定
さらに、キャラクターの設定をさせます。生い立ち・住みか・性格・特性・動き・時代、ターゲットとする年代・性別やキャラクターの役割などマーケティングターゲットも書かせます。服装が決まってきます。
(4)下描き
コピー用紙などに抵抗感のない紙を多めに用意し、下描きをさせます。
思いつかない生徒には、「好きな目」「好きな口」など好きなキャラクターの組み合わせで描かせます。
3. 直感的に描ける画材で
(5)画材はネオピコと色鉛筆を準備
画材は自由とするが直感的に描けるネオピコと水彩色鉛筆を準備します。CGでも良いこととします。
最後は大きめのボードに「絵」と「キャラクターの設定」を書かせるが、切り取って貼っても良いこととします。「キャラクターの設定」は、プリントとして使用した「コンセプトシート」を貼っても良いこととします。
4. 平面キャラクター制作の授業から
「果たしてオリジナルキャラクターが発想できるのか」が不安であったが、その心配はほとんどなかった。生徒にはそれぞれ好きなキャラクターがいて、それらのアレンジによってもオリジナルのものを生み出すことができる。生徒の持つ創造力を信じることができた貴重な題材となった。
5. 立体キャラクターブーム
キャラクター製品は平面にとどまらない。人気キャラクターは、ぬいぐるみになったり、キーホルダーとなったり、必ずと言っていいほど立体化される。キャラクターの製品化には、立体造形が不可欠なのだ。
それらの立体グッズ化だけではない。もっとリアリティーを追求した「フィギュア」も存在する。
フィギュアブームの火つけ役は、村上隆の16億円フィギュア制作でも知られる「海洋堂」である。北斗の拳、エヴァンゲリオンなどアニメフィギュア、動物や恐竜などリアルフィギュアなど創作の幅は広い。
先日、10数年ぶりに秋葉原へ行ったのだが、その様変わりに驚いた。「ホビー館」の名付けられたビルには、所狭しと立体物が並べられ、数十万円もするフィギュアに人だかりができている。フィギュアという分野だけでも一大産業となっていることを肌で感じられた。
いわゆる「彫刻」とは別の方向で拡大し続ける立体キャラクターは、生徒にとって身近な彫刻作品となっている。それは必要性という動機づけになるのではないかと考えた。
6. 骨格・土台は頑丈に
(1)下絵は実物大で
下描きは実物大で描きます。下絵にトレーシングペーパーを重ね、下絵に合わせたヒトデ型を描き、それに合わせて針金で骨格を作ります。
(2)自立できる骨格作り
針金は二重に「よって」、強度を上げます。足の部分を木の土台にU字釘を複数打ち、がっちり固定します。重要なのは、この時点でしっかり自立していることです。骨格と土台がしっかりしていれば、その上の粘土による作業はどんな形になってもグラつくことはありません。
7. 肉づけはアルミホイルと石粉粘土
(3)アルミホイルでかさ増し
すべて粘土で作ると、粘土の量が増えるため、重量が増し、費用もかかります。また、針金との付きを良くするため、アルミホイルで6割ほどまで中身を作ります。
(4)石粉粘土で精巧に
粘土は石粉粘土を使います。石粉粘土は、乾くと木の硬さくらいまで硬くなるため、紐状に成形したり、のし棒で平たく成形し布のようにもできます。
また、乾燥後は、ヤスリで磨いたり、彫刻刀で彫ることも可能になります。かなり細部まで造形することが可能な素材です。
8. アクリルで描くように塗る
(5)着色はアクリル絵具で
着色はアクリル絵具を使います。目などは絵具で描きます。表面保護のため、ニスを塗り完成です。ニスは、水性であれば特に種類は問いません。作品の雰囲気に合わせて、ツヤありとツヤ消しと両方準備しました。
9. 立体キャラクター制作の授業から
まず反応は、楽しそう。リラックスした雰囲気で、黙々と集中し作業をしている。たまに作品を見合いゲハゲハと笑い声も出る。触覚的な造形作業は、人の原初の創作欲求とつながっているように感じた。
講 演 会 平成30年度 長野県高等学校美術工芸教育研究会 研究大会
2018年11月16日(金) 14:40~
サントミューゼ多目的ルーム(上田市)
 
講演会
平成30年度 長野県高等学校美術工芸教育研究会 研究大会
2018年11月16日(金) 14:40~
サントミューゼ多目的ルーム(上田市)
 
講師: 束芋(たばいも) 〈現代美術家〉
演題: 『 凡人のアイデア、自分だけの手法 』
 
日本独自の風景を取り入れたアニメーションを制作。社会が抱える問題を、ユーモラスにそして不気味さと不安感を伴う世界観で表現した映像作品で知られる。会場全体を立体と組み合わせた映像インスタレーションは、鑑賞者を圧倒させる。「高校美術3」(日本文教出版)でも紹介されている作家である。
1975年兵庫県生まれ。現在は長野県在住。
1999年京都造形芸術大学卒業制作として発表したアニメーションを用いたインスタレーション作品「にっぽんの台所」が、キリン・コンテンポラリーアワード最優秀作品賞受賞。2001年「にっぽんの通勤快速」横浜トリエンナーレに最年少出品で脚光を浴びる。
主な個展:2003年「束芋:夢違え」(ハラミュージアムアーク)「束芋:おどろおどろ」(東京オペラシティ)、2006年「ヨロヨロン 束芋」(原美術館)、「TABAIMO」(カルティエ財団現代美術館)、2009年「断面の世代」(横浜美術館)、2015年「Tabaimo: MEKURUMEKU」(シドニー現代美術館)、2017年「Tabaimo: Her Room」(サンノゼ現代美術館)、「Tabaimo: Utsutsushi Utsushi」(シアトル現代美術館)。
国際展出品に、2002年 サンパウロ・ビエンナーレ、2006年シドニー・ビエンナーレ、2007年「dolefullhouse」ヴェネツィア・ビエンナーレ。2011年に「teleco-soup」ヴェネツィア・ビエンナーレで日本館代表として出品を果たす。
 
「にっぽんの通勤快速」(2001)
「にっぽんの台所」(1999) 
「あいたいせいじょせい」(2015)
©Tabaimo / Courtesy of Gallery Koyanagi and IMO studio
 
東信出身の著名作家
アニメーション監督  新海誠(しんかいまこと) 
 
高校生の時 自転車での帰り道
夕日がすごくきれいな日があって
 
悲しいことやつらいことがあったわけでもないのに
不意に涙があふれてきたことがあった
 
僕たちはいつも 何かの前日にいる
 
自分は大きな自然に包まれている
世界の一部なんだという感覚と
 
可能性だけが大きい
目の前にある茫然とした未来
 
この感覚が
今の作品づくりの原点になっている
 
新海 誠 
NHK 経済フロントライン 2016年8月27日 放送
アニメーション映画監督 新海誠さん「蛇口のようでありたい」
 
新海誠 しんかいまこと
 
1973年長野県南佐久郡小海町生まれ。野沢北高校時代には小海線で通学し、弓道部に所属。中央大学文学部文学科国文学専攻卒業。
2002年、個人制作アニメーション『ほしのこえ』を発表。以降『雲のむこう、約束の場所』『秒速5センチメートル』『星を追う子ども』『言の葉の庭』を発表し、コアなファンを獲得していく。
2016年、『君の名は。』を発表。国内動員数1900万人を突破し、興行収入240億円、世界中でも大ヒットを記録。自ら執筆した小説版も150万部を超えるなど、社会現象にまで拡がった。
作家としての大きな功績は、世代や時代を越えて変わらない人間の感覚があることや、個人が感じていることや考えていることが世界中の人々とつながる可能性があること、を示したことなどが挙げられる。