上原一馬 34歳 国画会最年少会員に

 
34歳 国画会最年少会員に 諏訪清陵高教諭・上原さん
 
諏訪清陵高校(諏訪市) 美術教諭の上原一馬さん(34)=富士見町落合=がこの春、全国的な美術公募展「国展」を主催する国画会絵画部の最年少会員に推挙された。絵画部長の松岡滋さん(61)=埼玉県川越市=によると、30代で会員になるのは異例の早さ。上原さんは人物をデフォルメして描くなど感覚に訴える作風を基調にしてきたが、近年はイラスト風の画法も取り入れている。会員になり、「思いがけない名督。人の心を動かす絵を描いていきたい」と抱負を話している。
 
生徒に接して変わった意識 「若い世代に伝わる絵を」
 
東京の国立新美術館で開いた第84回国展 (4月3日~5月10日)に2作品を出品し、会員約100人による審査で過半数の推挙を得た。アクリル油彩画「風の旅路」は、女性の背後にタカの羽や時計方位磁石、前面には色鮮やかな花やチョウが描かれる。テーマの「旅」につながる個々のものが、画面で不思議な印象を作り出している。

以前は褐色系のトーンで、壁の染みを見ていて浮かんできた人物像や、キャンバスに絵の具を流して偶然できた形を作品に取り入れていた。「分かってくれる人に伝わればいい、という自己完結的だった」と振り返る。

だが、一昨年ごろから「分かりやすさ」を意識し始めた。きっかけは普段接している高校生が、自分の作品に反応してくれなかったこと。「見る人に、特に若い世代に伝わるような絵を描こう」と考え、多くの人を引きつけるアニメーションやイラストレーションの画法を取り入れた。

佐久市生まれ。中学生のころゴッホの作品を見て「うまくないけれど力がある」と感じてから、「いわゆる『きれいな絵』でないものに引かれきた」。筑波大術専門学群に在学中から、気に入った画家が出品していた国展へ応募し始め、1997年に初入選。高校美術教師の職に就いてから奨励賞を2回受賞し、2005年に準会員になった。

普段の制作はそのアトリエで、家族が寝ている間の午前2時半から5時半ごろにかけて。「描くことは自分が自分に与える課題。それを解決するため、年1回の『国展出品という期限の中でもがいている」。社会的に認められる「会員」になったことで「評価してもらわなければいけないという意識から離れられる。自分の感覚に正直に描いていきたい」と次の制作に意欲を見せていた。
 
〔 信濃毎日新聞 2010年(平成22年)5月22日 土曜日 〕