絵画作家 上原一馬 ウェブサイト

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updated 2024-05-05
 


2010.12.30

ギュスターヴ・モロー






ギュスターヴ・モロー。
1800年代のフランスの画家だ。


先日、国立西洋美術館で、モローの作品を見て、
やはり自分はこの絵が気になってしまうことに、あらためて気がついた。


「神話」。
モローの絵には、神話がある。


多くの少年の空想の中に、冒険があり、城があり、王様がいる。
そこから、自分の旅の過程を作り上げる想像力は、誰しも持っている。
少年達はなぜか神話の中の旅することを欲する。


そんな空想を絵にしたようだ。
神秘的な空気も好きだ。


モローの絵にはストーリーがある。
そのストーリーは神の奇跡を想像してしまう。


空間の広がり。永遠に続く空間がモローの絵にはある。
主人公が存在するのに、広大な空間の一部となっている。


この ストーリー 空間 の広がりは、モローの絵にしかない。

2010.11.27

Feebee






上の絵は Feebee というイラストレーターのもの。


彼女の絵は濃い。
男性ならば引いてしまうような内容なのだが、
彼女の絵はいやみではない。
むしろ毒の役割をしていて、妙にひきつけられる。


本当は見たくもない、
ド派手に着飾った、いやらしくて、執念深い女性の本性を、
ちょっと覗き見してみたいような、そんな感覚か。


「今見てたでしょ。」
強力な流し目で見られた情けない男はたじたじ…
「あなたもこっちへ来る?」
そうして絵の虜に…
作者の思うつぼじゃないか。


内容とはうらはらに、
グレーの線は洗練されていて美しい。


日本の伝統手法をCGに発展させた現代の絵師。
徹底して正と負の「日本」にこだわる。
西洋絵画の模倣をがんばっている日本の作家達に挑戦状を突きつけるように、
「これが、日本文化なのよ。思い出しなさい。」とも言わんばかりだ。


こう書いているうちに、誰かに画集を貸したまま返ってきていないことに気づく。
確信犯的借りパクでやられた。

2010.10.30

スティーナ・パーソン stina persson





スティーナ・パーソン というイラストレーターが好きだ。
水彩でさっと描かれたものなのだが、
とにかくいかしている。


片意地はらず、ささっと完成。
みたいに描いているところが、かっこ良くてにくい。


彼女の絵の特徴は、水彩のグラデーションの色の海から、クールな人物が浮かびあがってきているところ。
完全ではないところに、つかめそうでつかめない人物の虚像のような魅力がある。


人物はいつの間にか背景に溶け込み、別の世界に行ってしまうような。
溶け込んだ部分は、夢や想像の世界とつながっているような、そんな余地を残しておいてくれる。


あいまいであるが故の永遠な感じ。


制作途中に、特にすごく描き込んでいるときに、たまにこの絵が観たくなることがある。

2010.09.26

松井冬子






松井冬子 がNHKの『トップランナー』に出た
彼女の絵はあいかわらず気になっていたので、
しばらく前から録画予約していた。


上の絵は 「世界中の子と友達になれる」
私が一番好きな絵だ。


まず、このタイトルに魅かれた。
うつろな画面の外側に何かを探し求めるような女性。


最初は素通りした絵だったが、
後で気になって何度も観てしまった。


「観ざるを得ない」
これが松井冬子の絵の魅力だ。


番組では、彼女のコメントが良かった。
結構、人が隠したがるようなことを、
理路整然とあっけらかんと話す。


作品に対する思い入れは、半端ではない。
そこには、感情と思考とが濃密に詰め込まれている。


番組を観た後、自分の作品が妙に薄く見える。


彼女が目標として、
「マスターピース(傑作)を描きたい」 と言っていた。
印象的な言葉だ。
すっかりこの言葉が気に入ってしまった。


松井冬子は日本画界のスター。
彼女には、これから日本画を志す者の、
見本であり続けて欲しい。

2010.08.28

藤森照信






藤森照信展 を見に行く。
入った瞬間から、何かワクワクする感じ。


藤森照信についてはほとんど知識がないのだが、
この人は本当に面白い。


このような面白い建築物を作ろうと思い、
本当に作れたことがすごい。


子どもが作ろうと空想した基地のようなものが、
そのまま実現している。


茅野市にある ゲゲゲハウス ぐらいは知っていた。
これを知ったときは「ムム」と思った。


私は子どもの頃、 キャンプに行った森で、
3本の木を見つけた。
その上に家を作ろうと思った。
友人達は川で遊んでいる間、ひたすら家作り。
ハシゴで登るタイプのまさに「ゲゲゲタイプ」。
そかし半日かけてできたのは床面だけ。
なんとか乗れる位で、心地よく過ごすにはちょっと...


その時の衝動は何だったのか。
幼い記憶を思い出しながら鑑賞にふけった。


美術館外の 「空飛ぶ泥舟」 は大人気だった。
入りたかったようだが、「2時間待ちです。」と言われ断念。
別世界に浸った少しの時間だった。

2010.07.27

長時間コピー機占領者





今日は、コンビニで拡大コピーをする。


最大サイズのA3に濃度を調整して一度コピーしたら、
紙を折り曲げて、一区画ずつ、拡大コピーをする。
家に帰ったら、テープでつなぎ合わせるのだ。


コピー機の最大倍率は400%。
一回で済まないものは厄介だ。


そうこうしているうちに30分が経過。
今は、朝3時。
この時間でないと、落ち着かない。
コピー機の後ろに誰か並んで来たものなら、調子が一気に狂ってしまう。
しかし、店員と二人というのもで気まずい感じがしたので、店を代えることに。


しかし、次のコンビニの画質が気に入らず、また元のコンビニへ。
「あのー、小銭に替えて欲しいのですが...」
また無言の時間。


家に帰り、画面に合わせてみると、サイズが合わないことが分かる。
しっかり計測したはずなのだが、倍率が合わなかった。
こういう時は意外と目検討でやった方が合う。


それぞれのコンビニのコピー機の微妙なクセまで知ることになった。

2010.06.26

天野喜孝





天野喜孝。私の好きな作家の一人だ。





画集は2冊持っている。
上野の森美術館で開催されていた大個展にも行った。


鉛筆と水彩で描こうとする時、
どうしても彼の作品が頭をよぎってしまう。


画材はシンプル。
水彩やアクリル。油彩の作品もあるが、技巧的ではない。
だが、納得してしまうような世界観がぎっしり詰まっている。


描こうとする世界があって、
それがたまたま絵具で描かれている。
そんな感じだ。


描き方に迷いはない。
鉛筆は走り、絵具はにじむより速く塗られる。


ゲーム「 ファイナル ファンタジー 」の絵が一番有名なのだと思うが、
私が好きなのは「 吸血鬼ハンターD 」のあたりの絵だ。


クールで怖い。
「吸血鬼ハンターD」がどんなものかは知らないが、
これから起こる物語まで想像してしまう。


そう 天野喜孝の絵には、世界観と物語があるのだ。


私が持っていない、でもきっと必要なのだろうと思っているものを、
たくさん持っている。
だから尊敬してしまうのだろう。

2010.05.01

第84回 国展




今回国展は会員に推挙されての参加だった。
会員になったことで、いろいろな人と話がしやすくなったという感じだった。





印象に残った作品だが、 まず1つ目は初出品でありながら国画賞と取った 清水恭平 君の「夜の下で」
絵に狂った男が、 闇夜の中スポットを浴びこちらをにらんでいる。
自画像だろう。
なんと古くて、まっすぐな絵だろう。


本人は、人を寄せ付けない雰囲気かと勝手に想像していたが、実にまじめでていねいな感じの学生だった。
ツンツンした感じはなく、とてもシャイな男だ。
まだ、大学に在学中なのだという。


会期中「 鴨居玲 だ」という噂が飛び交っていた。
確かに鴨居の「私」という作品に似ている。


影響を受けているのは、「 ホセ・デ・リベラ 」だと語っていた。
もっと本質の古典だったのだ。


このような、奇を衒わない、良い絵が最高賞を得るということは、 国展にはやはりしっかりした審査の目があるのだと思う。





2つ目は、 長谷川宏美 さんの「2010 Life」


長谷川さんは最近大顔面の絵を描いている。
今回の作品は、縦に細型に等分した画面構成だった。
人物がつかめそうでつかめない、不思議な抽象と具象が溶け合う画面だった。
さわやかな初夏を思わせる色彩。この色彩は男では出せないだろう。
大画面の迫力とスピード感。


近年の長谷川さんの作品の中でも名作だと思う。


家に帰って来ても、もう一度あの作品に会いたい。
そんな出会いのある展覧会だった。

2010.04.24

新会員に推挙 要因はいかに



国展本部から電話がかかってきた。
今年の国展で審査の結果、「会員」推挙されたとのこと。
苦労してきただけに、うれしさが込み上げ、思いがめぐり、数時間何も手がつかなかった。


会員になるための道のりは、公募展に出品されているかたならお分かりだろうが、長く険しい。


国展の作品出品は、一般出品から始まる。一般の部で、受賞や上位入選を重ねたりすると、準会員に推挙される。準会員審査の中で、上位を重ねると会員に推挙される。


説明するとこのようなプロセスになるわけだが、一番早い人で10年くらいはかかる。
普通は20年〜30年くらいなのだろうか。そのくらいの人が多いように思う。
途中でやめてしまう人も多数。同年代の友人も半分以上入れ替わった。


今回特に力を入れたのは、「内容」だ。


少しくらいの「技術の差」「内容の差」には勝てない、と思う。
実際制作していると、作り方に目が行きがちなのだが。


作品のまわりの空気が変わるような、「凛」とした絵を目標にした。
そのために、描くものは分かやすく伝わりやすいものに厳選した。
思い描いた空気を感じるまで、とにかく画面に向かった。

とにかく一人でここまでこれたとは思わない。
アドバイスをいただいた先生方、互いに切磋琢磨し合った仲間、応援し支えてくてた人に、本当に感謝している。

2010.03.20

ツヤ出し か マット か



画面の「ツヤ」はどうあるべきか。


昔は完全に「マット」な画面が好きだった。
時間によって風化したような感じを出すには、ヤスリをかけ、マットな風合いを出す。
和紙の触り心地のような、良さ。


今回の作品は「ツヤ」がある。


雨の日、錆びた壁は、表面の水のコーティングで、宝石のような美しさを出す。
普段見せない「あっ」と思うような別世界が、そこに現れる。


ツヤのある画面の作り方は、溶き油の調合にある。


基本は次のとおり。

乾性油  1  (リンシードオイル、スタンドオイル、ポピーオイルなど)

樹脂   1  (ダンマル樹脂溶液)

揮発性油 2  (テレピン)


私の好きな2人の作家の調合は以下のとおり。

小木曽誠
 乾性油  1  (ポピーオイル)
 樹脂   1  (ダンマル樹脂溶液)
 揮発性油 2  (テレピン)


諏訪敦
 乾性油  1  (リンシードオイル)
 樹脂   1  (ダンマル樹脂溶液)
 揮発性油 2  (テレピン)


しかし、これだとツヤが強すぎ、
乾くのに1〜2週間かかる。


せっかちな私(上原一馬)は、
 乾性油ではないが  1  (ホルベインペインティングメディウム + フラマンシッカチフ)
 樹脂        1  (ダンマル樹脂溶液)
 揮発性油      2  (テレピン)
次の日には完全乾燥する。


しかし、速く乾き過ぎ、ぼかしがうまくできない。
その場合、乾性油をサンシックドリンシードに代える。

いつか見た、雨の日の壁のような画面
それが私にとって理想の画面だ。

2010.02.28

中村佑介 Blue




松本パルコにてイラストレーター 中村佑介 の「Blue」を購入した。


彼の作品を好きになったのは、 ASIAN KUNG-FU GENERATION のCDジャケットからだ。


中村佑介の作品は繊細だ。
線は一本一本ていねいに描かれ、細かいところまで描写している。


それとはうらはらに、構図は大胆。
画面を円形や曲線が横切るように入ってくる。


色彩センスは抜群。
中間色でグレイッシュに描かれる彼の絵は、ついついきれいなアンティークな小物を買いたくなるのと同じ感覚で、欲しくなる。


何よりイラストのテーマは絶妙に『「現在」と「過去」の交錯』する、何とも言えない世界だ。
いつも今の鑑賞者や若者の視点を意識し、昭和初期のノスタルジーを取り入れる。
そんなおしゃれでかっこいい絵は、若者を虜にしている。


即日完売したそうだ。私の持っているのは3刷版と書かれていた。

2010.01.01

フェナキストスコープ 動く絵



http://www.youtube.com/watch?v=yxFoRZnxeEA

「フェナキストスコープ」で動画を作ってみた。


「フェナキストスコープ」とは、円盤に12コマの絵を描いたもの。
鏡に映しながら回転させ、すき間からのぞくと絵が動いているように見える。
アニメーションの原型だ。


自分自身で制作したものと、制作指導をした高校生の作品を合わせて5分間の映像にまとめてみた。


制作したソフトは「iMovie」。Macを買うと最初からおまけで入っているソフトだ。
あくまで趣味的な作品なので、お金をかけずに制作。


コマ撮り写真を0.5秒程度で再生しているだけのシンプルなもの。


年末、テレビを見ながらシコシコ制作した。
結構時間がかかったが、最高の空き時間の過ごし方だった。


『自分で描いた絵が動く』。想像しただけでもワクワクしないだろうか。