絵画作家 上原一馬 ウェブサイト

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updated 2024-05-05
 


2015.12.29

福室千尋 弾ける色彩のリズム





福室千尋



福室千尋 さんは、国展の若手の中でも、すばらしい個性を持つ作家の一人だと思う。


作品群の中で、福室さんの作品を見ると、パッと明るくなった感じがする。
色彩も鮮やかで、構成も軽やか。
この掴めそうで掴めない形体も良い。


今回の新作では、今まで見られなかった花の形体が加わった。
これもまた面白い。
さらに人の心を引き込むようなテーマになっている。


現状に満足せず、自分の作風をどんどん進化させようとする姿勢もすばらしい。


2016年1月11日〜16日に、 銀座スルガ台画廊で個展が開催される。
この個展が楽しみだ。


2015.11.29

田村研一 永遠の少年





田村研一



田村研一
昨年(2014年)の東京都美術館で開催された、『公募団体ベストセレクション』に選出され、注目を集めた作家だ。


普通の部屋や町は、瞬く間に異空間に姿を変える。
無重力空間に物が飛び交い、
少年やおじさんがロボットを操り始め、日常を飲み込んで行く。


まさに少年の心を失わずに描き続ける画家だ。


新制作展に出品し続けていたが、私も知らなかった画家だ。
新作家賞を受賞したのも、大学を卒業してから20年と遅咲きだ。


描写力が熟すまでには長い年月を必要とし、
ようやく今、彼の想像力とかみ合い始め、動き出したのだろう。


忘れられない絵だ。
この画家はきっと、これから多くの人の心をとらえて離さないだろう。


2015.10.10

森本草介 完全なる理想美を描いた人





森本草介



10月1日に、 森本草介 氏が心不全のため 亡くなられた、という報が入る。


森本氏は国画会会員。
国展と言えば、というくらい代表する作家の一人だ。


セピアの女性像や風景は、「美しい」の一言で、
絵は日常の喧騒から穏やかな空気へと、心を一瞬で変えさせる。
そして同時に絵の中の人物に恋をし、
髪の毛の一本一本までが美しいこの永久不変な理想像を手に入れたい、というコレクターの欲求へと変わる。
完全な美を欲しがる心理とはこういうものなのだろう。


印象的だったのは、国展の初日。
森本草介氏の新作をいち早く観ようという観客で、作品の前には毎年人だかりができていた。


その人気ぶりは、作品の価格にも表れている。
現存する作家の中で、最も高額で取引きされていた。


今年秋のオークションでは、その落札価格は、10号で2900万円。
だんとつの人気ぶりで、 千住博氏や絹谷幸二氏らの倍以上の値段だ。


千葉の森本氏の作品コレクターが、森本草介の作品を最も良く見せるためにワンフロアを作った、写実絵画の美術館「ホキ美術館」がある。
ちょうど、昨年行ったばかりで、
森本草介氏のすごさを痛感したばかりだ。


写真は、 森本草介 氏が2012年最後に国展の審査会場にいらっしゃった時の写真。
旧友の佐々木良三氏と受賞候補作について熱い議論を交わしているところ。


早すぎる死は、ショックが大きかった。
今もなかなか筆を取れずにいる。


森本草介 佐々木良三


2015.09.26

にじみ出る熱 辻久美子×船越多美子





辻久美子・船越多美子



9/28月〜10/3土、 銀座スルガ台画廊 で、辻久美子・船越多美子 二人展が開催される。


二人は国展で今一番ホットな女性作家だ。
この組合せは、なかなかすごい。


辻久美子 さんの作品は、土着的、呪術的な表現で、ぐいと胸をつかまれる何かを持っている。
他の作品と並んだ時、全然発するオーラが違う。
感情の密度が違うのだ。


船越多美子 さんの作品は、植物を一見クールに描いているようだが、そこに熱い思いが込められている。
多重的な色彩と、かすれた筆の塗り重ね。
いつまでも見飽きない魅力的な絵だ。


クールだが、どこまでも熱い。
無関心ではいられない。
そんな二人の作品だ。


二人とも作風は全く違うが、制作に対する姿勢は共通するものを感じる。
この二人が意気投合したのもうなずける。
見逃せない展覧会だ。


2015.08.30

横江逸美 少女の夢





横江逸美



横江逸美 さん は、国展の作家の中でも、独特の個性を持つ作家だ。


絵がやさしさにあふれている。


ついつい展覧会では強烈な絵が目立ってしまうが、
横江さんの絵は、穏やかな輝きを持っている。


童画や絵本のような表現は、 まるで、少女の見る夢の世界のようだ。
とても静かで、どこかさみしさを感じる。
つい引き込まれてしまい、じっくり観てしまう。


9/14月〜9/19土には、 画廊宮坂 で個展がある。
楽しみだ。


2015.07.30

伝説の洋画家たち 二科100年展





松本竣介



東京都美術館へ「伝説の洋画家たち 二科100年展」を観に。


岸田劉生、佐伯祐三、古賀春江、藤田嗣治、松本竣介、岡本太郎、東郷青児など蒼々たる画家たちの絵が並ぶ。
あらためて二科展の伝統を感じる。


その中で最も印象に残ったのは、 松本竣介の「画家の像」。
中学の時、教科書で観て好きになった絵だ。
本物を観れたことにまずは感激した。


この絵からは、強い意志のようなものを感じる。
家族を背負い、遠くに町を眺める、立てる主人公のまなざしが何とも言えない。


画面は褐色で、透明感に溢れている。
夕焼けのような懐かしい画面だ。


思えば、私の前の絵のシリーズはここが原点なのか?
という作りだ。


本物は予想より大きな絵で、写真より本当にすばらしかった。
久々に良い作品に出会えた気がした。


2015.06.14

新田美佳 妖しき夢の世界





新田美佳



新田美佳 は、新しいイラストレーターの一人だ。


紙にペンと水彩というシンプルな画材だけで、
溢れるように次々と作品を生み出している。


音のない怪しい世界。
自分は夢の世界を見ているかのようだ。
しかも後に残るような…


少女は純粋だが、怖さも秘めている。


少女にとりまく昆虫たち。
友達なのか、それとも少女をむしばもうとしているのか。
少女は恐怖感を抱いてはいないようだ。


画面はいたって清潔で、シミの一つすら許さない。
しかし、髪の毛の線のしつこい描写や、 背景の点描には、執念すら感じる。


なんともグイッとつかまれる絵だ。


新田美佳。彼女は、伝説の作家となっていく予感をさせる。


2015.05.02

第33回 上野の森美術館大賞展





高木陽



上野の森美術館大賞展を観に、上野駅へ。


上野の森美術館絵画大賞
《赤い柵に囲まれた大地球儀》高木陽


一度見たら忘れられない絵だ。


のどかな博物館での展示風景と思いきや…


大勢の人が地球儀を眺めている。
その地球儀は何だろう。
たくさんの不気味な動物やモンスターがうごめいているようにも見える。


観客も怪しい。
皆、無表情にマスクをかぶっているようにも見える。
一人だけがピュアな少年だ。


赤い柵がこの怪しさにさらに緊張感を与えている。


確かに妙に頭にこびりついてくる絵だ。


この作家のもう一点も展示されていたが、
それは、宮殿のような展示物のある一室の風景だった。


こちらは、奇をてらったところがない、ていねいに写実的に描かれた絵だ。
大賞作との共通点は、モノトーンに赤の差し色の柵というところ。


描写力も優れていることが分かる。




他の作品も若い感性に溢れていた。


佐山修 のうさぎの絵
永井祥浩 の白っぽい絵
近藤美恵子 のハスの絵


の3点は、本当にすばらしい印象に残る絵だった。


2015.04.29

第89回 国展





今年の国展が始まった。
国立新美術館では、『ルーブル美術館展』と『マグリット展』が開催中で、GWの初日は大混雑だ。


今回の国展で注目した作品達。
新しい感性にはいつも刺激を受ける。




冨田真人



〈冬のピャックドラゴン〉冨田真人 (国画賞)


何だこれは??である。
ピャックドラゴンなどというピンクの怪物を真剣にリアルに描写している。


錆びた扉の情けない風景と若い女性とのアンバランスさもなんとも言えない。


女性がドラゴンに餌をあげている。
このからみがドラゴンに感情移入をさせる。


この作品を描くのには、途方もない時間がかかっただろうが、このテーマで完成までもっていった作者の無謀さに脱帽である。




下沢匡史



〈MY LOVE〉下沢匡史


国展の傾向みたいなものを一切無視したような新鮮さだ。


ペンとコピックで楽しいキャラクターで埋め尽くされている。
その一つ一つの発想のすばらしさ、完成された世界観が、何とも言えない。


観る人も笑顔にさせてしまうような作品だ。
グッズ販売もできそうな未来も感じさせる。




奥村幸



〈刻Ⅱ〉奥村幸

初入選ではないらしい。
こんな優れた作家がいたことに気づかなかった。


展示も二段目で良く見えなくて残念。
もう少し近くでみたいのに…


このやさしくも、寂しい雰囲気に魅かれた。
日本画のような絵肌も何とも言えない。


公募展では目立たない作品になってしまうかもしれないが、
個展ではきっとファンがつくだろう。




レセプションでは、冨田真人さんと会話ができた。
他の二人と会えなかったのは残念だった。


2015.03.09

ミヒャエル ボレマンス





ミヒャエル ボレマンス



全日本アートサロン絵画大賞展に参加するため、大阪へ。


1日目は、会場となっている大阪市立美術館や、あべのハルカスをまわり、
2日目は、大阪国立国際美術館へ。


ここは現代アートの美術館。
楽しめればいいか、くらいに思っていたが、衝撃的な出会いがあった。


彼の名は、ミヒャエル ボレマンス。


作品は写真で見たことがあったが、
それまでは、ちょっと上手いリアリズムの作家くらいに思っていたが、
実物は全然違った。


何気ない人物画なのだが、ぐいっと掴まれる絵。


さらっと描いているのだが、この筆のストロークの気持ち良さ。
褐色なのに古さを全く感じさせないクールさ。


何気ない人物を、何気ない構図で描いているのに、
画面から発せられてくる、不安な静寂感。


日本の今を時めく作家、 柏本龍太 などが彼の影響を受けていることが良く分かる。


直感的な観察で描くボレマンス。
油絵の特質を生かした自由な感性。


2年前の原美術館での個展を観に行かなかったことを猛烈に後悔した一日だった。


2015.02.22

国展研究会





国展研究会長野



国展 長野県東北信研究会 が開催された。
会場は佐久平駅近くの佐久勤労者福祉センター。
公園やジャスコに隣接するのどかな場所にある。


研究会は、国展に出品予定の作品を持ち寄って行われる。
大作は業者が自宅を回って搬入する。


今回の研究会は、4月の国展東京展に向けての中間発表的な意味合いがある。
2ヶ月後に迫った搬入に向けて参加者は真剣そのものだった。


作家からの自作についてのコメント、他の参加者からの感想、そして国展で審査をしている会員(山岸恵子会員・飯嶋基会員)からの講評という順で進んでいった。


研究会はじっくり一人30分という贅沢な持ち時間。
しかも会員3人からのコメントという機会はあまりないだろう。
(講評を受けるほうとしてみれば、つらい30分かもしれないが。)


その後は、昼食会や夜の懇親会など、穏やかな楽しい会に移る。
やはり作家が集まると、自然に画論が熱くなる。


制作は孤独な戦い。
このように、集まれる仲間がいることをうれしく思う。


宣伝
 国展 長野県東北信研究会
  長野県の北信と東信合同で、 国展出品希望者対象の研究会を行っています。
  Ⅰ期11月とⅡ期2月の年2回です。
  興味のある方は、メールなどで問い合せをどうぞ。


2015.01.31

ハーモ美術館 癒しの緑の素朴派美術館





長野県下諏訪町にある ハーモ美術館 へ。
諏訪湖畔に面した眺めの良い美術館だ。


この美術館は「素朴派」のコレクションで知られている。
穏やかで、ほっとするような明るい緑の絵画が一連となって展示されている。
そのからは、コレクターの趣向がうかがえる。



アンリ・ルソー



アンリ・ルソー
世界に200点前後しか存在しないとされているが、うち4点がこのハーモ美術館にある。
貴重な作品だ。


ルソーが本格的に絵を制作したのは、退職した50歳くらいからだそうだが、
素朴派の画家達は遅咲きの人が多い。




グランマ・モーゼス



グランマ・モーゼス は、農家に嫁ぎ、描き始めたのは75歳。
101歳までの間に1600点を描いた。
「モーゼスおばあさん」は、アメリカ国民なら誰しも知る国民的画家である。


「わたしの生涯というのは、一生懸命に働いた一日のようなものでした。」
と語るように、勤勉な人生であったことがうかがえる。




上條喜美子



そして、ハーモ美術館で現在行われている企画展は、
国展作家の「 上條喜美子展〜記憶の森〜 」である。
国展の会員になってから、今年2015年までの作品が並んでいる。


この美術館の穏やかな緑の風景画にぴったりの作品だ。


絵本のような明るい緑の風景。
自然に元気をもらえそうな絵だ。




2015年の3月22日まで開催されている。


この日は、上條さん達、松本の国展の仲間達と食事をさせてもらった。
楽しい一日だった。