絵画作家 上原一馬 ウェブサイト

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updated 2025-04-14

上原一馬 2025年のブログ
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2025.05.03

第99回 国展

 
完璧な結婚 谷原菜摘子

 
2025年、99回展となる国展が始まった。
コロナで遠ざかっていた出品者もだいぶ戻り、若手作家の出品も昨年よりも増えてきた今回。
海外作家の出品増や、AI作品の登場など、時代の変化を感じる新たな風も吹いてきた。
そんな中、私の注目した作品を紹介したい。
 
完璧な結婚 谷原菜摘子

山門みつき「お稽古中のこどもたち」国画賞
 
まだ学生の作品だ。
2年連続の最高賞である国画賞の受賞。
 
まずは、作品の物語性と、登場人物のキャラクター設定に目が魅かれる。
文章で物語を作り上げ、そのストーリーを絵にしていくのだという。
 
色彩も鮮やかで、明るい色合いも目に飛び込んでくる。
 
一人一人のキャラクターの描写も丁寧で、見ていて飽きない。
物語の世界をあれこれ想像するのもまた楽しい。
 
圧倒的な票数によって選ばれた作品だった。
 
 
完璧な結婚 谷原菜摘子

仲村浩一「Great Chiba Journey 〜醤油紀行〜」国画賞
 
国画賞の二作目。
 
この絵を見た時、奇想天外すぎて驚いた。
家の中なのか、外なのか分からない。
主人公が食事するちゃぶ台の上には、刺身や焼き魚。
題名から千葉の醤油にまつわる絵だということが分かる。
 
画面のざらついた独特の質感は、壁画のような時間経過を感じさせる。
絵具に収集した砂を混ぜて描くのだという。
 
どのような年代の作家だ描いたのだろうと思っていると、
主人公と同じ風貌の作家と出会い、20代の大学院生だと知った。
 
若者が惹かれる昭和レトロの魅力、
作品から嗅覚を刺激されるような匂いのような雰囲気。
古くて新しい不思議な作品だった。
 
 
完璧な結婚 谷原菜摘子

長沢拓実「ふれて(しまう)」絵画部奨励賞
 
屋外空間に、切り取られたような手の一部。
不気味な感じもあるが、不思議と癒やされるような優しさに包まれている。
繊細さと、大きな受容感が共存する、夢の中のような世界。
 
描写力もあり、このあり得ない虚空の空間を、リアリティーを持たせて表現している。
 
あまり出会ったことのない雰囲気の作品で、
一通り見終わった後も、なぜかこの絵のことを思い出してしまった、印象的な作品だった。

 

2025.02.01

令和6年度 東京藝術大学 卒業・修了作品展

 
完璧な結婚 谷原菜摘子

 
東京芸大卒制を観に上野へ。
今年度は、土日が1日のみということで、人数制限のある予約制になっていた。
それでも会場は超満員。熱気に包まれていた。
 
完璧な結婚 谷原菜摘子

會見明也「境界線上において変わりゆく自他について」
 
数年前からの大きな変化は、AI技術を取り入れた作品が増えたことだ。
AIで簡単に作品が作れるようになったのだが、誰でもできるような作品ではなく、その技術をさらに活用しようという作品だ。
 
エラーメッセージにより、AIにより生成される不可解な画像。
それは人の発想力を超え、奇妙な形体として現れる。
理想形を作り上げるはずのAIが作り上げる、不可解な理想形。
 
そこから発想し、手描きで描かれているのがこの作品。
マスキングとエアブラシを使い、実にていねいに描かれている。
表面もレジンで美しく加工され、表現の奇妙さと裏腹に美しい画面だ。
 
現実世界と仮想現実世界。
その狭間に生きる人々に問題提起をしているような作品だ。
現代人の叫びが聞こえるような、心揺さぶられる作品だった。

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