絵画作家 上原一馬 ウェブサイト

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updated 2025-12-07

上原一馬 2025年のブログ
UEHARA Kazuma's Blog


 

2025.11.23

アニメーション背景画家 武重洋二 背景画講座

 
上原一馬 武重洋二

 
アニメーション背景画家の武重洋二先生の背景画講座に参加させてもらった。
 
武重洋二先生は、スタジオジブリ作品 宮崎駿監督の「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」「ハウルの動く城」、細田守監督の「サマーウォーズ」の背景画でも知られる日本アニメ背景画界の第一人者である。
 
限定15名の講座をなんとか勝ち取り、当日はわくわくした思いで、長野県東御市にある丸山晩霞記念館に足を運んだ。
 
そこには、展示されているご自身の絵を眺める、武重先生がいらっしゃった。またとないチャンスに、神のようなかたとお話する機会を得ることができ、本当にうれしかった。
 
武重洋二

 
今日の背景画講座は、空に浮かぶ雲を描く、というもの。
 
最初に武重先生が、デモンストレーションしてくださり、その様子もばっちりと動画におさめた。
 
絵具はニッカーのポスターカラー。
これで全て描くのだという。
絵皿に水で溶き、あっという間に空の美しいグラデーションが描かれる。
その度に、受講者からは、ため息と驚きの声がもれた。
 
雲は、白の絵具を乗せていくのかと思いきや、最初は水筆で絵具を抜いて、白い画用紙を見せていく。
そこから、白絵具での雲の描画が始めていく。
まねできないような、すごい描画の早技だ。
 
今度は自分でやってみることになるのだが、当然武重先生のようにはうまくはいかない。
しかも、さっきアニメ背景に使われた実物の絵を見た後とあっては、もどかしい気持ちにあふれた。
 
しかし今日は、確実に武重先生の手の動きを、目に焼きつけることができた。
 
最後は色紙にサインをしてもらい、気持ちが向かない時はこれを見ようと、自分の心に誓った。

 

2025.11.16

国展NAGANO パネルディスカッション

 
完璧な結婚 谷原菜摘子

 
今週は、国展NAGANOアートフェスタの開催週だった。
日曜日、国展作家たちによるパネルディスカッションが行われた。
5日間の開催日の最終日、今日で来場者は2,000人を超え、盛況のうちにこの日を迎えられた。
 
今回のパネリストは、
絵画部 会員 畔上 朝一さん
絵画部 会員 飯嶋 公子さん
絵画部 新人 石川麻優子さん
工芸部 会員 小林 慶子さん
 
私 上原一馬は、司会を務めた。
 
国展 上原一馬

 
他の作家の皆さんから、制作の様子を聞くのは、とても楽しく勉強にもなる。
へぇ、と思うことばかりだ。
 
発想の方法としては、皆さん、普段から気になったものなど描きたい材料を集めているようだった。
描かない時も、材料となるものを探している様子がうかがえた。
 
構図の決め方としては、小さな紙に設計図のように綿密に描くかたもいれば、キャンバス上でアドリブで描いていくかたもいて、その違いが興味深かった。
 
パネリストの方々のお話を聞いて、変化を求め制作する様子に、世阿弥の言葉を思い出し、紹介させていただいた。
 
「時分(じぶん)の花とまことの花を知る心が、真実の花になお遠ざかる心なり。」
若さや流行りという一時的な魅力に惑わされず、時代に左右されない本質的な価値を追いなさい
 
「住(じゅう)する所なきを、まず花と知るべし。」
とどまり続けることなく変化し続けることが、芸の本質であり、花(美しさ、魅力、面白さ)を生み出すのだ
 
本質的な価値とは何かを考えつつ、変化し続ける作家たちの姿勢を感じた、そんな時間だった。
 

 

2025.05.03

第99回 国展

 
国展 上原一馬

 
2025年、99回展となる国展が始まった。
コロナで遠ざかっていた出品者もだいぶ戻り、若手作家の出品も昨年よりも増えてきた今回。
海外作家の出品増や、AI作品の登場など、時代の変化を感じる新たな風も吹いてきた。
そんな中、私の注目した作品を紹介したい。
 
山門みつき

山門みつき「お稽古中のこどもたち」国画賞
 
まだ学生の作品だ。
2年連続の最高賞である国画賞の受賞。
 
まずは、作品の物語性と、登場人物のキャラクター設定に目が魅かれる。
文章で物語を作り上げ、そのストーリーを絵にしていくのだという。
 
色彩も鮮やかで、明るい色合いも目に飛び込んでくる。
 
一人一人のキャラクターの描写も丁寧で、見ていて飽きない。
物語の世界をあれこれ想像するのもまた楽しい。
 
圧倒的な票数によって選ばれた作品だった。
 
 
仲村浩一

仲村浩一「Great Chiba Journey 〜醤油紀行〜」国画賞
 
国画賞の二作目。
 
この絵を見た時、奇想天外すぎて驚いた。
家の中なのか、外なのか分からない。
主人公が食事するちゃぶ台の上には、刺身や焼き魚。
題名から千葉の醤油にまつわる絵だということが分かる。
 
画面のざらついた独特の質感は、壁画のような時間経過を感じさせる。
絵具に収集した砂を混ぜて描くのだという。
 
どのような年代の作家だ描いたのだろうと思っていると、
主人公と同じ風貌の作家と出会い、20代の大学院生だと知った。
 
若者が惹かれる昭和レトロの魅力、
作品から嗅覚を刺激されるような匂いのような雰囲気。
古くて新しい不思議な作品だった。
 
 
長沢拓実

長沢拓実「ふれて(しまう)」絵画部奨励賞
 
屋外空間に、切り取られたような手の一部。
不気味な感じもあるが、不思議と癒やされるような優しさに包まれている。
繊細さと、大きな受容感が共存する、夢の中のような世界。
 
描写力もあり、このあり得ない虚空の空間を、リアリティーを持たせて表現している。
 
あまり出会ったことのない雰囲気の作品で、
一通り見終わった後も、なぜかこの絵のことを思い出してしまった、印象的な作品だった。

 

2025.02.01

令和6年度 東京藝術大学 卒業・修了作品展

 
東京藝術大学卒業・修了作品展

 
東京芸大卒制を観に上野へ。
今年度は、土日が1日のみということで、人数制限のある予約制になっていた。
それでも会場は超満員。熱気に包まれていた。
 
完璧な結婚 谷原菜摘子

會見明也「境界線上において変わりゆく自他について」
 
数年前からの大きな変化は、AI技術を取り入れた作品が増えたことだ。
AIで簡単に作品が作れるようになったのだが、誰でもできるような作品ではなく、その技術をさらに活用しようという作品だ。
 
エラーメッセージにより、AIにより生成される不可解な画像。
それは人の発想力を超え、奇妙な形体として現れる。
理想形を作り上げるはずのAIが作り上げる、不可解な理想形。
 
そこから発想し、手描きで描かれているのがこの作品。
マスキングとエアブラシを使い、実にていねいに描かれている。
表面もレジンで美しく加工され、表現の奇妙さと裏腹に美しい画面だ。
 
現実世界と仮想現実世界。
その狭間に生きる人々に問題提起をしているような作品だ。
現代人の叫びが聞こえるような、心揺さぶられる作品だった。

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