上原一馬 2026年のブログ
UEHARA Kazuma's Blog
2026.04.29
100回記念国展 注目作家
上原 一馬「ここにいるよ」
国展が100回展を迎えた。
資料展示もされていて、国展の歴史や作家たちの軌跡を知ることができる。
記念展もあるのか、初出品者も増え、記念展にふさわしい展覧会になった。
注目したの次の作家。
李 香淑「欲」
最近では、外国人の方の出品も多くなってきた。
中国のかたの出品だろうか。
いろいろなものを抱える女性。
花や果実、化粧瓶やアクセサリー。女性らしいアイテムが多い。
この女性のパーソナリティーを表しているようだ。
確かな描写力で描かれている。
一方、背景はさまざまな赤系の色で、抽象的に描かれている。
具体的なものを描かないことで、いろいろなことを想像させる。
この背景と人物を違和感なく一つの画面に描くことは難しいのだが、
人物の描画を絶妙に平面的に処理することによって、統一感を持たせることに成功している。
優れた構成力に感心した。
伝わってくる雰囲気の良さがとても快かった。
樋口 佳凛「生彩を翔く 」
海に飲まれる制服の少女。
荒れる波は、波しぶきの一つ一つ、水中の色まで詳細に描かれ、生物のような息遣いとうごめきを感じる。
セーラー服の少女は自画像なのだろうか、海の中に沈み込み、顔は消失している。
水にゆらめく服や、映り込む波の光まで再現して描かれている。
若さを象徴する人物と、大きな自然の力に巻き込まれる死のイメージとの対比が興味深く感じられた。
作者は大学4年生。
美大ではなく、立教大のサークル、「サバンヌ美術クラブ」に所属しているのだという。
キャンバスロール代などは共同材料費でまかなえるため、意外に優遇されているそうだ。
国展に出品を続け、将来的には、ぜひこの歴史あるクラブを伝承する指導者にもなって欲しい人材だと感じた。
城倉 綾子「ようこそ、私の楽園へ 」
楽園というタイトルがつけられているが、対象的な不穏な空気を感じる。
天気は晴天ではなく、嵐の前のような曇り空。風も感じられる。
ボートのようなものが水に浮いているが、人物は不在。
代わりに熱帯の鳥が画面の外に無関心な表情で木にとまっている。
この絵の最大の魅力はこの渋い色彩と絵肌。
薄く塗り重ねたり、厚塗りで下の色が見え隠れを重ねたり。さまざまな試行錯誤を繰り返しながら描かれている。
思い出したのが、ルドンの一つ目の絵。
夢で見た風景のような、頭にこびりついてくるような、不思議で怖くて忘れられない景色。
この、目で見たままではなく、心の中に浮かび上がる不思議な風景を描いた作者に、ものすごい力量と可能性を感じた。
2026.01.31
令和7年度 東京藝術大学 卒業・修了作品展
今年も東京芸大卒制の時期となった。
新しい感性と出会える1年に一度の楽しみ。
予約制になってからも、会場は多くの人で埋め尽くされていた。
オンラインの時代になってからも、毎年入場者は増え続けているように思えた。
五嶋伶那「龍」
日本画。迫力と、画面の美しさに圧倒された作品。
渋い黄土色でありながら、目に飛び込んでくる。
描いているものの実体がつかめない。
鹿のようなものかと思えば、うろこがあり、龍が描かれているようだ。
鳥のようなものものも描かれている。
どんなに見ても幻想のようにすり抜けていく。
しかし、その画面は確かな技術力に支えられている。
ざっと描いているように見せて、緻密な塗り重ねが強さとなって心つかまれる。
なかなか見ることのないレベルの高いような、空想の日本画作品だった。
劉柏辰「文本記憶」
小さな作品なのに、心をとらえられる、引きつけられる力がある。
作品の奥深さが伝わってくる。
単純な感情というよりは、複雑に絡み合ったものを感じる。
記憶の世界を描いているようだ。
写真では表せない記憶の形。
その場面を見た人が、その人の感情でとらえた一瞬の時間世界。
記憶は不確実で、その輪郭は曖昧だ。
しかし、確かに脳裏に浮かび上がり、忘れられない場面記憶だ。
その記憶をリアルに描き出していく。
あいまいな部分はあいまいに。
印象的な部分はよりリアルに。
その時、この絵は写真よりも真実を描いたことになるのだと感じた。